バルーンとエアロクラフト

 「エアロクラフト」とよく間違われるものに風船浮き輪アドバルーンなどがあります。

しかし、風船浮き輪アドバルーンはエアロクラフトとは違い、
空気を常時、入れ続けることはなく、
空気やヘリウムガス等を入れて膨らませてしまえば、そのまま口を縛って閉じてしまいます。

当社では上記のものを、
「空気封入式」構造体としてエアロクラフトと区別しています。

また、「空気封入式」は、
おもに小型のものに向いており、
大型造形・長期間使用するものには不向きといわれています。

バルーンとエアロクラフトとの比較

バルーンとエアロクラフトの違いを分かりやすく表にしてみました。
比較してみてください。

 エアロクラフトバルーン全般
仕様常時送風式空気封入式
材質ナイロン生地
テント生地
ビニール
ゴム素材
重量5~10kg1~5kg
耐久期間
(屋内)
10年以上
(機器換3~5年)
短期
(1ヶ月以内)
耐久期間
(屋外)
3~5年短期
(1ヶ月以内)
耐衝撃やや強い
(刃物:弱)
弱い
落下の危険性低いなし
可燃性防炎可燃
オプション照明なし
ランニングコスト電気代空気充填

まず、材質が異なっているのが
わかると思います。

バルーンに使用されている
ビニールやゴム素材
屋外に長期間置くとぼろぼろになりやすく、
扱いやすさと軽さはかなりのものですが、
耐久性は低くなっています

エアロクラフトで使用する
テント生地
イベントのテントや工場のテント倉庫に
使われているのと同じ種類のもので、
雨にも日差しにも強いものです。

ナイロン布地はテント生地ほどの
丈夫さはないものの、
室内で使用する分には充分な強さがあり、
難燃性も備えています。

また、耐久期間にも大きな差があります。
エアロクラフトが最低でも3~5年あるのに対して、
バルーン全般は、だいたい1ヶ月程度の短期しかもちません。

いったいそれはなぜなのでしょうか。

空気封入式の弱点

  • 風船
風船

 風船を膨らませて口をしばっておくと、しばらくは膨らんだままですが、
数時間又は数日たつとしぼんで小さくなってきます。

 どうしてでしょう?

風船の中の空気が膨らんでいるということは、中の空気圧が外の空気圧よりも高いということです。
気圧が高ければ、物質に低い気圧の方に移動する力がはたらきます。
空気は気体であり、細かい分子でできています。
風船はゴムでできています。
風船が膨らむとゴムが伸びるので、当然ゴムも薄くなり、
ゴムの分子の間隔も広くなります。
すると、空気がゴムの分子のすきまから風船の外にもれ出ることができます。
また、縛った風船の口も完全に密閉してはいません。
その口からも空気はもれ出てきます。
こうして風船はしぼんでいきます。

  • 浮き輪

 それでは、ゴムではない厚めのビニール袋の浮き輪を膨らませて
みたらどうでしょうか?風船よりもずっと長く膨らんだままでいます。
なかには、ずっとしぼまないものもあります。これなら大丈夫のように見えますね。

さて、では、この浮き輪を大きくしたものはどうなるでしょう?

  • アドバルーン

 浮き輪と同じ空気封入式の大きなものとしてアドバルーンがあります。
アドバルーンは空気ではなく、空気より軽いヘリウムガスを入れて空に浮かべるものですが、
口をしっかりと密封していてもしぼんできます。
これはアドバルーンが新品の場合でも同じです。

なぜ大型のバルーンは長期間使用すると空気が抜けてしまうのか

                              
 空気や水は気体・液体であり、鉄や石等の固体と違い、流体です。
流体はためておけば動きませんが、流れ出す場所があればそちらに移動していきます。

 また、流体は全体の体積が大きくなればなるほど、
まわりにかかる圧力も比例して全体的にまんべんなく高くなります。
そして一ヶ所、弱い所があったならば、そこに全体の圧力が集中し、
耐えきれなくなったそこから流れ出していくのです。

 つまり、空気を大きなバルーンに入れて膨らませた場合、流体の性質上、
穴の口や皮膜の接続部分に体積に比例した圧力がかかります。

少しでも穴が開いていたり、接続の弱い部分があれば、
そこに全体の空気圧が集中します。

よって、空気圧の小さい小型のバルーンよりも、
より強度を増して空気を密封しないと、内部の空気圧に耐えられずに

穴や弱い部分が空気圧により広がり、空気がもれ出してしまう、
というわけなのです。

空気が抜け出てしまうなら

 では、穴が開かないようにしっかりと接続すれば良いかと思いますが、
材質(布)の形状上、大変困難になります。

例えば、タマネギに料理で使うラップを、皺にならないようにかぶせてみてください。

玉ねぎとラップ

なかなか困難だと思います。ラップに切込みを入れたり伸ばしたりしないと、
どうしてもどこかしら皺ができるはずです。
切込みが多くなると、当然接続部分が増えて、空気が漏れないように加工することは
極めて困難であり、手間がかかります。

 では切込みをなるべく少なくするとどうなるか…接続部分にたくさんの皺ができます。

空気圧は全体に均等にかかり、皺の部分にも張り詰めようとするため、
皺を無理やり引っ張ってしまい、その結果、
形状に弱い部分が発生して穴が開きやすくなります。

そしてこうした部分がいろんな造形をつくるにあたり、必ず出てきてしまうのです。

 「空気封入式」の場合、一箇所でも穴が開けばそこからどんどん空気が漏れ出し、
いずれ形状を維持できなくなります。
よって、空気が抜けたら供給する必要がでてきます。

しかし、現実的にはどうでしょう?

 空気が抜けるたびにその都度入れるのは手間暇がかかって大変です。
しかも形状が大きくなればなるほど、供給する空気も大量に必要です。
けれどもそこまでの手間をかけるわけにはいきません。
 そのために空気封入式は短期での使用に限られてきてしまっている、というわけです。